卵巣嚢腫

卵巣は子宮の左右にあり、月経がある方では親指くらいの大きさですが、大きく腫れた状態を卵巣腫瘍と言います。腫瘍の中に液体が溜まる嚢胞性卵巣腫瘍を卵巣嚢腫と言います。

治療法の4つの柱、具体的な治療方法や効果についてわかりやすく解説します。

卵巣腫瘍

1 卵巣腫瘍とは、どんな病気?

通常親指大くらいの卵巣が、それよりももっと大きく腫れる状態を「卵巣腫瘍」といいます。
その中で、液体が溜まる症状があるものを「卵巣嚢腫(嚢胞性卵巣腫瘍)」といい、卵巣腫瘍の80%程度を占めています。卵巣嚢腫の多くは良性ですが、まれにがん化するものもあります。
「卵巣嚢腫」と区別して、硬い塊が大きくなっていくものを「充実性卵巣腫瘍」といい、悪性のものが「卵巣がん」となります。

2 卵巣嚢腫 4つの種類

ここでは「卵巣嚢腫」の種類について解説します。

  1. 漿液性嚢腫
    「漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)」は、卵巣から分泌されたサラサラの液体が溜まり袋状になる嚢腫です。ほぼ良性ですがまれにがん化することもあります。思春期以降、年齢を問わず発症する可能性がある腫瘍です。
  2. 粘液性嚢腫
    「粘液性嚢胞腺腫」は、黄色や痰白色のドロドロとした液体が溜まり、袋状になる嚢腫です。
    著しく肥大することがあり、まれにがん化することもあります。閉経後にみられることが多い腫瘍です。
  3. 成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
    「成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)」は、卵胞のなかにある生殖細胞から発生する嚢腫です。
    生殖細胞が分裂する際、成熟途中のものが混入し、歯や骨、毛髪、脂肪などが含まれる腫瘍ができます。嚢腫が大きくなると、下腹部痛などが現れることがあり、これもまれにがん化することがあります。
    比較的若い女性に多い傾向があることもわかっています。
  4. チョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)
    「チョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)」は、子宮内膜症が卵巣にできる嚢腫です。
    月経の際に剥がれた子宮内膜などが、卵管を通して逆流することで起こります。溜まった古い血液が変色し、チョコレートのような色になることから、チョコレート嚢胞と呼ばれます。
    閉経前の女性に発症し、不妊の原因ともされています。チョコレート嚢胞も、まれにがん化することがあります。

3 考えられる原因は?

卵巣嚢腫の発病原因は解明されていません。時に遺伝性の場合もありますが、全てではありません。
卵巣嚢腫は、嚢腫が小さいうちは症状が出にくいものです。妊娠や月経不順などをきっかけに病院を受診し、見つかることもあります。
衣類のウエストがきつくなったり、下腹部が張っているような感じがしたり、トイレが近くなったことをきっかけに受診し、診断されることもあります。

4 病院では何をするの?

エコーやMRI検査、血液検査などで診断します。
子宮内膜症によるチョコレート性嚢腫はホルモン療法が有用ですが、それ以外の卵巣嚢腫には薬がありません。嚢腫の小さいうちは経過観察となりますが、嚢腫が大きくなると、下腹部痛や張りのような違和感、硬い物が触れるしこりなどの症状が現れることがあります。嚢腫は20~30cmほどにまで肥大することがあり、大きくなる過程で破裂や捻転すると、強い下腹部痛が起こり、卵巣の壊死や腹膜炎などに繋がりやすくなります。この場合、緊急手術を要することもあります。
チョコレート嚢胞の場合、卵巣・子宮・直腸と癒着しやすいことも特徴のひとつです。慢性的な腹痛や排便痛、性交痛などを伴うケースがあります。また、慢性的な炎症により、不妊の原因となることもあるため、場合によっては手術が検討されます。

5 こんな方がお越しになります

  • 毎回生理前後のPMSが起きていられないほどつらい
  • 生理時の出血量や血液の色に違和感がある
  • ストレスが多い
  • 自律神経失調の症状を伴う
    (睡眠障害・首肩こり・生理不順や生理痛(PMS)・うつ病など)
  • 夏でも手足が冷えるほど、強い冷え性
  • 妊娠を希望しているがなかなか授からない
  • 病院で卵巣嚢腫やチョコレート嚢胞と診断された
  • 病院で処方された薬が効いている感じがしない
  • 薬や手術以外の方法で解決したい

6 卵巣嚢腫における鍼灸治療4つの柱

1つ目の柱:自律神経を整え、不定愁訴を改善する

自律神経は、心身のバランスを正常に保つ働きを持ち、子宮の働きや生殖機能に深く関わっています。
卵巣嚢腫によくみられる腰痛、腹痛、お腹の張りなどの症状に加えて、生理障害、便秘、首と肩のこり、冷え性、睡眠障害、イライラ、焦燥感、恐怖、不安、落ち込みやすい、抑うつなどの様々な症状がある方が多く見受けられます。
皮膚への鍼灸による刺激によって、自律神経のバランスを整え、併発する不定愁訴を一つずつ減らして行きます。

2つ目の柱:自律神経を整え、ホルモンバランスを改善する

女性の卵巣でつくられているのが「女性ホルモン」です。女性ホルモンは「妊娠・出産の機能、そのためのカラダづくり」という役割をもっています。女性ホルモンには「エストロゲン〈卵胞(らんぽう)ホルモン〉」と「プロゲステロン〈黄体(おうたい)ホルモン〉」の2種類があります。

エストロゲンは「妊娠の準備」、「女性らしいカラダづくり」、プロゲステロンは「妊娠の維持」といった役割をもっています。約28日間の周期で訪れる月経も、女性ホルモンの作用によってコントロールされています。血液中にしめるホルモンの量は、50mプールいっぱいの水に対しスプーン1杯ととっても微量ですが効果を発揮します。
ホルモンはバランスがとれていることが大切で、多すぎても少なすぎても身体に影響が生じるのです。
鍼灸の刺激が、自律神経のバランスを整え、女性ホルモンの分泌を正常な働きに改善させます。

エストロゲン(卵胞ホルモン)
  • 子宮内膜を厚くして、妊娠に備えます
  • 女性らしいカラダをつくります
  • コラーゲン産生をうながし、美肌をつくります
プロゲステロン(黄体ホルモン)
  • 血管、骨、関節、脳などを健康に保ちます
  • エストロゲンの働きによって厚くなった子宮内膜を柔らかく維持して妊娠しやすい状態にします
  • 水分や栄養素をため込み、妊娠が成立したら、妊娠を維持します
  • 体温を上げる働きがあります
  • 食欲を増やす働きがあります

エストロゲンとプロゲステロンの女性ホルモン分泌量

3つ目の柱:経絡の流れの改善

東洋医学では、身体には「経絡」という気や血、水分といった物質やエネルギーの流れる12本の道があると考えられています。 経絡は五臓六腑といわれる内臓や、感情、筋肉などに繋がっています。病気は、経絡を流れる気・血・水分の流れやエネルギーの過不足・乱れが精神に影響していると考えています。
特に月経などの生殖機能は「腎」と深く関連しています。東洋医学では14歳で腎の気が満ちることによって月経が始まり、49歳で腎の気が衰え閉経を迎えると言われます。この腎の気が衰える時期に体内の気血のバランスが崩れ様々な症状が出ることになります。
鍼灸では「補腎(ほじん)」という腎の気を回復させるような治療をメインに行います。そして、症状によって、心であったり、脾であったり、肝の治療を補助的に加えていきます。乱れている経絡に鍼灸治療を施し経絡の流れを調整します。

4つ目の柱:骨盤底筋の強化

骨盤底筋とは、内臓を支える骨盤の底部に付着した部分で、恥骨から尾骨の間にある筋肉や靭帯と皮下組織から構成されているハンモック状の筋肉群を指します。
そして、骨盤底筋と女性ホルモンには、密接な関係があります。女性ホルモンのエストロゲンは、骨盤底筋の機能を維持するのに重要な働きをしていますが、更年期や閉経前後になると女性ホルモンの分泌が低下し、骨盤底筋の弾力やハリがなくなります。骨盤底筋が衰えると、尿もれや骨盤臓器脱などの症状が起こりやすくなります。
骨盤底筋を鍛えると、骨盤が正しい位置に戻り、血流が促進されます。また、骨盤内にある卵巣機能が向上し、女性ホルモン分泌量が必要以上に減少するのを防ぎます鍼灸治療は、骨盤底筋の障害について有効であるという研究結果が報告されています。

7 卵巣嚢腫における鍼灸治療のメリット

鍼灸治療は、東洋医学と西洋医学の両方から支持され、科学的にも証明された効果的な治療法です。
自律神経を整えることで、卵巣嚢腫の原因の元となる交感神経と副交感神経のバランスを改善し、身体全身の調和を取り戻します。
一口に卵巣嚢腫と言っても、人の身体は千差万別。私たちは一人一人に向き合い、お身体全体の状況を把握しながら丁寧に治療していきます。

鍼灸は、安全に⾧期間利用できる治療法です。自然な方法で身体全身のバランスを整えるため、卵巣嚢腫だけでなく、お身体全体が改善します。
薬の副作用が心配な方、薬に頼らずに根本的な治療がしたい方にぴったりの治療です。

8 プライバシーへの配慮

当院の治療スペースは壁で仕切られた個室です。デリケートなお話ですからプライバシーへの配慮は十分気を遣って行っています。
人間の身体はとても繊細で、心と密接に繋がっています。お気軽にご相談ください。

9 期待できる効果

  • 呼吸が深くなります
  • 肩こりなどの慢性の痛みが軽減します
  • 眠りが深くなります
  • 胃腸の調子が良くなります
  • やる気が出て気持ちが明るくなります
  • 生理の不調(PMS)が軽減します
  • 卵巣嚢腫が小さくなったり、消失したりします
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